NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

洒落・おやじの青春取材記  8 工藤 毅志

秋到来、 東コレ、  これな~に !

別にクイズではないけれども、9月から10月にかけて、新聞やテレビなどで毎年話題になる、ミラノコレ、パリコレ、東コレ。長い間、このシーズンになると、ミラノやパリにファッションジャーナリストが取材に出掛けて、取材記事を新聞、雑誌、TVに発表をして、次のシーズンのデザイナー達のファッション動向を伝えてきた。僕も雑誌の編集長時代は、ジャーナリストと一緒に、各コレクション会場に足を運んだというより、駆け足で動き回っていたのだった。さて、そのパリコレなどが何時から始まったのか?雑誌の世界に飛び込んでから、シーズンになると当たり前のように出かけていたので考えたこともなかったが、ちょっと調べてみたら、1960年頃との記述があった。僕なんか幼少の頃は母親の手作りだったし、仕立て屋さんに頼んだりと、プレタポルテ(既製服)ではなくクチュール(注文服)だったのだから、当然フランスでも60年以前はそうだった訳だ。

20世紀初頭、ロンドンの生地屋で働いていたイギリス人のチャールズ・フレデリック・ワース(フランス語読みで、シャルル=フレデリック=ウォルト)がパリに移って仕立て屋を開業し、幾つかのデザイン画を客に見せて、客の体型に合わせて作るということで評判を呼び、高級衣料店協会を設立して、最高の素材と技術、芸術的感性で仕立てられるハイクオリティのコレクションを「パリ・オートクチュール・コレクション」として1910年頃から開催されるようになったのがコレクションの始まりとされているようだ。

現在のような「パリコレ」と言う、本格的にプレタポルテを指すようになったのは70年代だから、日本の女性誌を大いに賑やかにした時期でもあった。既に日本を含めてファッション界は既製服主流の時代になったのだから、高価な注文服ではなく、その時に発表された服が、その季節に手に入るのだから、ファッション誌に注目が集まるのは必然だ。

 

丁度僕がこの原稿を書く時期が東コレの時期だった。その前に、ミラノコレ、パリコレがあって、その記事が朝日新聞に載っていたので、それを読みながら自分が観た東コレに触れてみようと思った次第である。

僕は今、ミラノやパリにコレクションに行ってないが、この新聞記事を写真と共に見ると、

「ナルホド」と頷いて、かつての経験を思い出してみたりした。ミラノコレクションでは「エネルギー縦横無尽」という見出しで、おとぎの世界を表現したグッチやプラダ、ロマンチシズムと自由さのアルマーニなどが紹介されている(編集委員の高橋牧子氏)。また、パリコレでは、「生きる喜び大胆に」という見出しで、同じく高橋牧子氏は、「16年春夏パリ・コレクションは近年になく大胆に、生きる喜びやファッションの楽しさを前面に打ち出した。広がるデジタル社会やノームコア(究極の普通)ファッションに反発するように、手の込んだ作品や驚きのある見せ方が多かった」と、ランバン、ヴァレンティノ、シャネル、ドリス・ヴァン・ノッテンなどを紹介している。東コレの記事は、ファッション担当の記者が「発想・演出 キャリアの貫禄」という見出しを付けて書いている。

 

僕は、これまでも毎シーズンほぼ欠かさずに東コレを観てきた中で、第一世代の大御所デザイナーと次世代の計4人を取り上げてみた。

共通して言えることは、前述のパリコレの高橋さんの記事ではないが、ファッションの楽しさを表現した作品作りが印象的で、観る側も一緒に愉しい気分に浸れるショーであった。まず、インビテーションカードからその香りが漂ってきたのもその一つだ。カードからその服作りの思いが伝わってくる。

HIROKO KOSHINO

シュールな画集というタイトルで、「花弁を光に透かせばひらひらと日常が舞う 世界をさかさまに眺めてみれば 浮かび上がる無意識の空間」から始まる詩に、敬愛する画家へのオマージュとして と添えた美しいカードを見るような彩りの美しいドレスの出だしから、白のドレスに変わっていく展開は、まさしく生の喜びを謡っている。色合いが美しい。ご本人の画家としてのイメージも多分に感じられるコレクションだった。

 

YUKI TORII

城戸 真亜子さんとユキ トリイさん
城戸 真亜子さんとユキ トリイさん

今回のコレクションは、画家 城戸真亜子さんの作品とコラボレーションしました。アートとファッション、森、水辺、光を鮮やかに表現した城戸さんのイメージを大切に、と城戸さんの作品「もりはささやく」「もりをぬける」の森と水の美しい自然を感じさせるドレスが登場。パリコレのベテラン・トリイユキさんらしさが滲んでいた

 

TAE ASHIDA

ミス アシダからタエ アシダに変わってから、僕は素晴らしい変身だと思っていたが、今回は、セクシーでヘルシーな自然美をベースに、嫋やかさと、凛とした女性像を例えばブライトカラーとダークカラーなど2つの様々な異なる要素を都会的にミックスさせながらも、服を着る喜びを感じさせる表現に、また一段とデザイナーの厚みが増してきたようにも感じるコレクションだった。

YUMA KOSHINO

エスニックをラグジュアリーで魅せる新たなクチュールコレクション、と銘打っての今回のコレクションは、最初のコーナー・アーバンボタニカルに色濃く反映されて、今までのコレクションでも民族やエスニックをユマさんなりに表現してきたファッションを更に昇華させた、楽しさ溢れるコレクションだった。

タエさん、ユマさんの第二世代は、共にBGMの音楽に工夫を凝らせたのも特徴的だった。

洒落おやじ・工藤 毅志(2015年10月25日)