NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

洒落・おやじの青春取材記 4 工藤 毅志

バガンにて、平和への祈り

寺院
寺院

ビルマの竪琴の舞台となった地に降り立つ

さて、読者の方で「ビルマの竪琴」という映画をご覧になった方はかなりいると思いますが、その映画は、第二次世界大戦時に激しいビルマ戦線での悲しい出来事を1946年に竹山道雄さんが書かれた小説を、1956年に映画化されて評判になり、多くの観客の涙を誘ったものでした。

 

勿論、そういう僕もその一人であったことには変わりませんが、それは、その主人公である水島上等兵が戦争という愚行の中で、苦悩し葛藤の末、ビルマに残ったという人間的な姿に、観る人の心を打ったからでした。水島上等兵の部隊の同僚が、帰国する際にすれ違った男を本人と見間違う筈がないのに、行き過ぎるまで「みずしま~」と呼び続けるシーンは忘れられない程でした。

左から:2004年建立の碑、献茶式、平和の祈り、小堀宗実宗匠の御点前

ミャンマーの内陸の都市バガンのイラワジ川畔

2006年に、僕が家庭画報インターナショナルの編集をしていた時に、ある人からのご紹介で、エクセ・コーポレーションの谷社長に会う機会があったのです。


その時の谷社長の話を聞きながら、是非とも取材してみたいと思ったのです。それは、その時より2年前の2004年11月15日に、ミャンマーの内陸の都市・バガンのイラワジ川畔で、戦争当時、尊い命を落とされた両国の人々への鎮魂と恒久平和を願って、祈念碑を建立し、谷氏とホテルの共同経営者を始め、日本からは、開眼供養の為に護国寺貫主・岡本栄司大僧正、献茶式に遠州茶道宗家十三世家元の小堀宗実宗匠という方々が集って、ミャンマーの要人と共に、平和への心を一つにしての敬虔な式展を催行したという話であった。

有名なジャズ奏者の渡辺貞夫氏が駆けつけ『ふるさと』を献奏

渡辺貞夫氏と工藤
渡辺貞夫氏と工藤
渡辺貞夫氏の演奏
渡辺貞夫氏の演奏

そして僕はその2周年になる2006年の献茶式に招かれて、関係者一行と共に機上の人となりバガンに降り立ったのです。

11月30日、バガン・イラワジ川畔の祈念碑を前にして、バガンの僧侶が読経する中、小堀宗実宗匠よって厳かに献茶式が執り行われました。この話を聞いていた世界的に有名なジャズ奏者の渡辺貞夫氏が駆けつけて、アドリブで古い日本の唱歌「ふるさと」を献奏され、そのメロディーは、イラワジ川を遥かに超えて駆け抜けたように響き渡って参列者の胸の奥まで震わせた。その後に続き、参列者一人一人がお線香を手向けて、平和を祈ったのでした。

その時、式典に参加された当時の日本国特命大使の小田野ご夫妻のお話しをお聞きしながら、ミャンマー国民への思いがひしひしと伝わってきた事を覚えています。

また、その夜、「音楽を通して平和を」とアジアを中心に活動されている渡辺貞夫さんの特別コンサートが開かれ、バガンの小学生の歌と競演するというサプライズもあり、この2周年の献茶式に相応しい感動的なコンサートとなって、人々の記憶に刻まれたに違いない一夜だったのです。

バカンの街

左から:微笑む少年、子供たちの歌、庶民の広場

少年の僧侶
少年の僧侶

少年僧侶との出会い


翌日、バガンの街へ出て歩いてみると、何処でも人々の笑顔に出会い、僕も思わず笑みを返したくなる。

ある大きな寺院の前で、白く塗られた塀に佇んでいる少年の僧侶を見つけて思わずカメラに収めて話しを聞いた。少年はほぼ10歳、小学生の年頃だ。
ここでは、10歳くらいから20歳ごろまでの間に2回ほど、お坊さんの修業をするそうだ。

その少年はきっと素晴らしい僧侶になるだろうと思える顔立ちをしていた。

また、街で出会う大人から子供まで殆どの人の顔に白茶けた泥のようなものが塗られていたので、何かと尋ねると、「タナカ」という木の樹脂をすりおろしたもので、日焼け止めに効果があるそうだ。ここバガンは内陸性気候で乾燥地帯の為、陽射しが強いので必需品だとのこと。成程、昔からの知恵だなと感心した。

この町でパゴダといわれる堂塔伽藍が、緑の木々生い茂る間に点在する美しいバガンの大地を一望するには、気球に乗ってみるのが一番だよ、と誘われて、初めて気球に乗ってみた。朝日の昇るその光を浴びたパゴタを見下ろしながら、オレンジ色の小さなお坊さん達の姿を思い浮かべ、初めて訪れたミャンマーに、自然と共に生きてきた日本人の心とを重ね合わせて、非常に身近な思いを抱いた取材旅行であった。

『埴生の宿』のメロディーが『希望の歌』に変わることを願う

イラワジ川
イラワジ川

それから8年後の今、ミャンマーの国も少しずつ変わり、日本との交流も盛んになって、映画・ビルマの竪琴で奏でられた「埴生の宿」のメロディーが、更に希望の歌に変わっていくのを願いながら見続けたいと、思っている。

洒落おやじ・工藤 毅志・2015年・614