NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

洒落・おやじの青春取材記 2

「メゾン・トロワグロ」、燦然と星に輝く

来日中の4代目、セザール・トロワグロシェフに逢いに、
ハイアット リージェンシー 東京に行った

かの有名なフランスのミシュランガイドが2008年、東京版を初めて刊行した時、「ハイアット リージェンシー 東京」に既に開店していた「キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ」が2つ星を獲得した。僕にとっては、びっくりしたわけでもなく当然と思ったのには理由がある。

33年も前、1982年6月に僕はフランスのロアンヌにある、「メゾン・トロワグロ」へ取材に行って、その偉業を目の当たりにしたからである。今のグランシェフ・ミッシェル・トロワグロ氏はその3代目であり、フランスで47年も親子で3つ星を守り続けて、そのご子息・セザールシェフが日本に来日と聞いたからには、セザール氏の祖父ピエール・トロワグロ氏に取材をした僕としては是非4代目のセザールシェフに話を聞いてみたかったからである。

僕が「メゾン・トロワグロ」を取材した当時は、料理本が最盛期、いや、それだけでなく雑誌やムック本が大いに売れていた時代だったし、フランス料理も流行っていたので、「フランスの一流レストラン」という項目を設けて現地取材に出かけたのであった。この選定は、その当時パリに住んでいて、フランスの有名なグランシェフを取材して、多数の著作物を出版していた作家の宇田川悟さんにお願いをして、パリ市内から地方へと8レストランを選び、カメラマンと通訳と一緒に廻ったのであった。この時代、フランス料理の世界では、「ヌーベルキュイジーヌ(新しい料理)という、伝統的なフランス料理に新しい風を吹き込む、やや軽めで、素材にも変化を富ませた料理が台頭してきた時期であった。取材当時の「メゾン・トロワグロ」の記事を披露しましょう。

働きやすい大きなそして近代的な夢の調理場

フランスの第2の都市リヨンから85キロ西へ行った所にロアンヌがある。この駅前にかの有名な「メゾン・トロワグロ」のホテル・レストランがあり、車を玄関から駐車場の方へ回すと、横に長く、ゼラニウムの真紅の花で彩られた、大きなガラス張りの部屋が見えた。陽射しに照らされてキラキラ輝くガラス越しに白衣を纏った人達の動く姿が見え、食事をするお客たちの姿が見えないのです。実は、この部屋こそ、フランスのレストランシェフ達の羨望の的になっている近代設備を誇る調理場なのです。トロワグロ兄弟のジャンとピエールの二人が長い間夢見た調理場だけに、料理人たちは本当に働きやすそうでした。

取材した日は、たまたまジャン氏の休みの日でピエールシェフが大きな体を動かしながら大勢の客の昼食準備に采配を揮っていました。外に向いた側はすべてがガラス張りなので、料理人たちの顔は外光に照らされてより一層明るくピチピチとした輝きをしています。

素材を吟味し、エスプリ溢れる料理の数々

トロワグロ兄弟は、パリの「リュカ・カルトン」を皮切りに修業を積み、今やリヨン周辺ではボキューズと並ぶ料理人となったのです。この二人のコンビから生まれてくる料理の数々は独創性に富んだ、エスプリ溢れるものばかりです。

勿論、料理に使用する材料は、例えば野菜や果物などは近くの農家で獲りたての新鮮な材料を使うなどは当然で、ソースなどの味を創り出す二人の努力は相当なものだからこそ、遠来の客がここまで楽しみにやってくるのです。

食事のサービスが終わり、緊張していた調理場全体に安堵感が広がり、ピエールシェフがメニューにサインを書き始めました。ここで働く二人の息子たちもやがては大きなシェフになるのさ、と彼はウインクをして、二人の仕事を眺めていました。

ご紹介の料理は、「トリュフの市松模様 トリュフ入りソース」「舌平目とラザーニャの籐編み風」これは、緑とオレンジの2色を細切りにしたラザーニャと蒸した舌平目の細切りを籐のように編み込んでクリーム入りのトマトソースを敷いた上に乗せた料理で、この籐編み風のアイディアは日本に行った時に見た籐編みからのヒントだと語ってくれました。「ひらめの花盛り細切りの人参添え」これらの盛り付けといい、ソースの味の組み合わせといい、やはりひと味違うと感激しました。1982年の取材記事は、このように締めくくっている。

4代目・セザールシェフは父親譲りの精悍な顔つきに繊細な料理人の魂が宿っている。去る4月17日朝9時に、明日帰国の途に就く忙しい日程の中でセザールシェフを尋ねた。

「ボンジュール」と挨拶を交わした時の第一印象だ。

プロフィルを見ると1986年生まれだから、僕の取材した年にはこの世に生まれてなかったことになるが、バカロレアを取得して、リヨンのポールボキューズ料理学校で基礎を学び、パリの2つ星の「ミッシェル・ロスタン」を皮切りにスペインの2つ星、カルフォルニアの3つ星レストランなど海外の名店で経験を積んだ後、父、ミッシェル・トロワグロのアシスタントをしながら、更に腕を磨き、2011年からシェフとして現在に至るその経歴を見ただけで、料理人のDNAともいうべき何かがあると思った。話を聞きながらその思いは強くなった。最初に取材したピエール氏はもう80歳を超えているが元気に過ごしているそうだ。「小さい時からキッチンで働いている祖父の背中を見て育ったから、無意識のうちに祖父の価値観が移っていたのでしょう。今でもよく料理の話をしていますよ。父ミッシェルの価値観も同様ですね。個性的な料理を作る情熱、お客様へのおもてなし、家族でテーブルを囲む喜び、そして、色々な物への好奇心など、そうした魂が続いているのでしょう。」

「トロワグロの料理は、いつもモダンであり続けることです。それも独自のモダニズムです。」この言葉は引き継いできた料理魂を4代目として、どう出していくのか、これからの楽しみである。

今回の紀州・原農園の柑橘類とのコラボレーションにその答えが見つかるか、これから食してみよう。

SUR LE CHEMIN DE WAKAYAMA(道に沿って和歌山へ)の芝居に感嘆

今回のこの企画は誰の提案ですか?と尋ねると、ここ東京のキュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロの現エグゼクティブシェフのギヨーム・ブラカヴァルからの提案もあって決定したのだと言った。トロワグロの代表的な料理と言えば、「オーセンティックサーモンのオゼイユ風味」と言われている。セザールシェフも日頃から、酸味を取り入れた料理、特に柑橘類を使った料理に定評があることから工夫しながら大切にしてきたので日本の素晴らしい柑橘類を使った料理として、「セザール・トロワグロmeets 紀州の柑橘類」のコラボレーション「道に沿って和歌山へ」が実現したのだった。

「こうした試みは、新しいアプローチをすることで、他のレストランではまだやっていないことに挑戦し、同時に料理人が新しい素材の出逢いに感動し、生産者の価値ある素材を生かすことにも、その価値を高めることにも繋がるなどその意義は大きいですね。食材がなければ料理はできないのですから。」セザール氏のこの言葉は、そういえば33年前の取材時に感じたことでもあった。

この洒落たメニュータイトル「道に沿って和歌山へ」の芝居は、全部で幕開きの「はじまりの1品」からデザートまで、6章の大舞台。その中から特徴的な3品をご紹介しよう。

1 foie

*Velours de foie gras(フォワグラのヴェロア)フォワグラを裏ごしして、ベルベットのように滑らかにした上のトッピング黄金柑やシロップ漬けのレモンの皮をあしらって、絶品。

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2 truite

*Truite aux epices, consommé vegetal(サクラマス 野菜のコンソメ)50℃のオリーブオイルで青森産のサクラマスをレアにコンフィして、表面にコリアンダーなど、下に山葵を塗り、周りにレモンの皮、甘夏、セロリの香りのする野菜コンソメを注ぎ、春菊をあしらって。

3 lang

*Bouillon de langoustine a la carotte, agrumes et shichimi(ラングスティーヌ キャロットと柑橘のブイヨン 七味唐辛子)人参と柑橘のブイヨンの味わいにピリッと七味が効いて。


これらの料理を味わった後、料理記者や専門家が分析して論評するようには言えないが、自分の五感で楽しめたのは間違いない。料理を楽しめるのは本当に幸せだ。この舞台を演じてくれた料理人達は、きっとキッチンという舞台で、口へ運んでくれるお客がいかに楽しんでくれるかの筋書きをしっかり演じてくれたことに大いに感嘆した。33年前の感激と時代は変わっていてもセザールシェフが言った独自のモダニズムを演じてくれた根本は全く変わっていなかった。

セザールシェフとの別れ際に、「来年は、貴方がロアンヌのトロワグロまで来る番だよ」と言ってお茶目な顔で握手をして別れた。

この記事が出る頃は、また新しい独自のモダニズムに挑戦していることだろう。

フランス料理、世界の頂点を極める二人のシェフの一日だけの、夢のコラボが実現。

INFO:日本人とフランス人、二人の料理人による夢の再会コラボレーションディナーの開催、来る5月29日(金) ここキィジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロのエグゼクティブシェフ、ギヨーム・ブラカヴァル氏とハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパの総料理長、金山康弘氏は5年前にパリの「ル・ピストラル」と「アガぺ」でそれぞれシェフとして活躍し出逢い、交流を深めた二人が、二人で訪問した生産者の食材を織り交ぜながら、二人の感性がひとつになったコースメニューを味わって頂くディナー。

1日限りの夢のコラボを是非どうぞ。

日時201529日(金)18:00~20:30(L.O.)
   ※営業時間中お好きな時間にご予約ください。
料金:1名さま 23,760円(サービス料、消費税込)お飲み物は含まれていません。

場所:「キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ」
住所:新宿区西新宿2-7-2 ハイアットリージェンシー東京1F

 

ご予約・お問い合わせ
TEL. 
03-3348-1234(代表)
 www.hyattregencytokyo.com/restaurant/micheltroisgros/

編集長

時代の最先端をリードしていくファッション誌の名編集長としてご活躍されていただけに、知識は豊富、博学です。特にフランスは彼の得意とするところ、これからNagasawa magazine 誌上にエレガントなテーマが躍ることを期待しております。