NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

「気になるシェフ」 レストラン・アンクルハット

依田輝明氏の30年の歴史

依田輝明氏(アンクルハット・オーナー)
依田輝明氏(アンクルハット・オーナー)

東京港区南青山にある、スパイラルの8F「レストラン・アンクルハット」のグラン・シェフ・依田輝明氏を訪ねた。依田氏とは、女性誌「ラセーヌ」編集者当初に逢ったので、

既に30年近くシェフの料理を食べにきたことになるが、シェフへの質問が「何故、料理人になったのですか?」と在り来たりの質問をしてしまった。

「僕は長野県の田舎の出身で、高校卒業後、希望は室内デザイナーの方へ進みたいと思っていたけど、当時は、中々見つからなかったので、将来のことを考えて、料理学校に入った。若かったから、美しく華やかなものに憧れて、和洋中と基礎は学ぶけれど、西洋料理を選択したのがきっかけです。幸運なことに、その時出会った料理長に恵まれて、24歳で、フランスへ修行に行くように勧められたのです。」

「パリでは、パリ郊外のブーローニュの森にある、2つ星レストラン「ジェラール・パンゴ」で1年程働いて、帰国前に1年半、当時話題のレストラン、パリ市内の3つ星「ジャマン・ジョエル・ロビュション」で働きました。ここでの修業が、その後の僕の料理に大きな影響を与えたと思います。」

20代の若き見習い料理人にとっては、ロビュションの料理に感動するのは当然のことだと、

僕も思った。何故なら、僕が女性誌「ラセーヌ」をやる前に、料理本の編集をしていた時、昨年5月号の青春取材記で紹介した、ロアンヌの「メゾン・トロワグロ」の取材の前に、パリの「ジャマン」の取材をして、ロビュション氏の料理を見た時の感動を思い出したからだった。料理の撮影をする時に、氏自ら、お皿に料理の盛り付けをしている姿を、周りに数人のアプロンティー(見習い)が、細切り野菜のジュレを描くように繊細に並べる様子を、食い入るように見つめていたのを鮮明に覚えている。

ロビュションでの修業を終えて日本に戻った依田氏は、丁度、東銀座にオープンするレストラン「アンリ―」で若くして料理長に就任した。その後、銀座のレストラン「レ・ザンジュ」に引っ張られて、グラン・シェフとして、依田シェフの名を世に知らしめた活躍ぶりをしたのだった。

そして1994年、現在のスパイラルの5階に、レストラン「ラマージュ」をオーナーシェフとして開店させたのであった。

氏の料理人としての哲学は、「グラン・シェフ」(柴田書店)の中でこう語っている。「練りに練った上で作ってこそ、深みのある料理が再現できる」つまり、目の前に素材があった時、その素材に感応してインスピレーションで料理を作るという方法もあるが、僕だったら、その素材を前に、あれこれ考える。こんな組み合わせは、こんな香りを加えたら、もっと味が変化するのでは、等と練りに練って料理を作り始めるのです。結果として、例え、非常に簡素化された料理として表現されたとしても、練り上げたうえでの皿なので、単にインスピレーションとは違います。」

この言葉通りのシェフだから、僕はこの30年間、色々な人とシェフの料理を食べに行っている理由の一つである。

最近、シェフの30年の歩み「過去から未来へ」と題したスペシャルメニューの中に、

「Ravioli de homard et St-jacque sauce civet “JOEL ROBCHON”(オマールエビのラヴィオリ仕立て ソース シベ ジョエル ロビュション風)」とあった。ちょっと気になって聞いてみた。ソース シベは、赤ワインで煮込んだソースで、その味をロビュション氏から学んだオマージュとしてメニューに入れたのだとのこと。流石だ。

季節のハーモニー・シェフの一皿
季節のハーモニー・シェフの一皿

この「グラン・シェフ」のインタビューの後半に「食べる楽しみにもうひとつドラマを」という言葉がある。このドラマは、いいドラマでなくてはダメだ。「ワ~美味しい。エッ、こんな組み合わせは初めてだ~」など、お客さんに与えるのが、僕たち料理人の使命だと思う。」ロビュションで学んできたものを、自分なりの感性に磨きをかけてきた依田シェフだから言えることなのだ。

最後に、「シェフの一皿」を作って貰い、ひと言を添えて貰った。

出てきた一皿は「季節の5種・小さな前菜・盛り合わせのハーモニー」

シェフ曰く、「まず、目から楽しんで、5つの小さな料理にそれぞれのドラマがある。その組み合わせのワクワク感を味わってくれれば最高。」ちょっと茶目っ気に話した。

この5種の小さな演目は、*桜鯛のあぶりとドライトマト バージンオリーブオイルの香り、*エビとズワイガニのブイヨンジュレ ゆり根のピューレソース、*ソーセージとモッツアレラチーズ、アンチョビのパイ包み パルメザンチーズ焼き、*14カ月熟成イタリア産プロシュートと野菜のマリネ、*岩手県産いわい鶏胸ボイルと春キャベツ アボカドのサラダ タルタルソース。

「これは、今月のメニューに入るの?」と尋ねたら、コースに入るとのこと

依田英幸支配人(輝明氏弟)
依田英幸支配人(輝明氏弟)
アンクルハット
アンクルハット

シェフ30年の歴史を振り返りながら、僕は、シェフと共に歩んできた弟の依田英幸支配人の接客サービスとの組み合わせが、ワクワク感を伴って、美味の世界へ誘ってくれているのだとつくづく思いながら、インタビューと取材を終えた。

 

2016年4月3日 工藤毅志 記

 

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東京都港区南青山5-6-23 スパイラル8F

「レストラン ラウンジ アンクルハット」

TEL:03-3498-5798 FAX:03-3498-9070