NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

ワインバトラー・ニールのライフワーク Part 36

一本のワインを試飲、分析する 2

シャトウ・ヌフ・デュ・パ―ブ           ARNO UX  &  FINS  VIEUX_
シャトウ・ヌフ・デュ・パ―ブ ARNO UX & FINS VIEUX_

徐々に寒さがじんわりと身に染みてきました。それでも今年は雪が少ない様に感じますが、これから一気に降るなんてこともあるでしょうから余り油断しないで過ごしています。油断とは降雪の準備をしておくということです。車に例えるなら、スタッドレスやチェーンを用意する。長靴は滑りとめを履かせるなど考えられることは色々とあるかとは思います。

 

さて今回も1月と同様に、ワインを試飲していきたいと思います。グラスに注がれたワインの外観、色調はややガーネットを含んだ比較的濃いルビー色です。赤ワインの色は大概がルビー色で濃さ、濃淡を付け加えれば宜しいのですが、ガーネット色というのも表現としてはあります。熟成が進んだ場合とか、品種の違いによってその色合いが加わってきます。グラスの淵のディスクは中程度ですが粘性はしっとりしていてレッグスもゆっくり落ちてきます。もう巷には沢山のワインが溢れかえっている時代ですので余り色合いや外観の様子からワインを限定することは難しくなりましたが、私がソムリエになりたての35年位前はフランス産が主流でしたからフランスのものという前提でしたらおよそですが見当はつきましたが,今はダメですね。それでもボルドー産やブルゴーニュ産ではないことは何となく分かっているのはもちろん銘柄を知っていることもありますが経験則から判断できます。

香りは最初はチェリーやラズベリーのアロマが主流で少し強く煮出した紅茶の様な香りもあります。空気に触れると丁子の様なスパイスの香り更に酸化鉄を思わせる香りに微かに血液の様なニュアンスも加わってきます。かなり特徴が際立った香りで複雑感があります。では、難しい表現なので少し読者の皆様にも分かりやすく付け加えて表現をしますと。酸化鉄というには、子供の頃に、鉄棒で逆上がりをした経験があるかと思います。その後に手を見ると久しぶりに鉄棒をやったりすると指の付け根の手のひらに豆が出来ませんでしたか?まぁそんなことはどうでも良いのですが、その時の手から香ってくる臭いのニュアンスです。

わかりますか?次に血液のニュアンスというのは例えばスーパー等で売っている牛肉が半冷凍から解凍が始まって血液が少しにじんでいる感じですかね。単語で表現するとなかなか分かりずらいんですがイメージできる文章にするとわかりやすくはなりますね。ただ、ここで注意が必要なのは、ソムリエの間では、表現は単語ですることになっていますからイメージ用語は通用しません。何故ならば個人のイメージはあくまで個人のイメージなので言葉としては共有できないというのが本当のところであります。

 

さて前回紹介させて頂きました赤ワインではカシスとか青ピーマンの様なベジタブル香と表現致しましたが、この表現を使うと、ソムリエ達は、「あっ!カベルネ系の葡萄品種だな!」と見当がつくことになります。

今回はチェリーやラズベリーと表現しましたので、ソムリエ達は「あっ!これはピノ・ノワールかも?」と使う単語で推測が出来てきます。ですが表現を最後まで見て見ないとここからどう変化するのか分かりませんから、複数の葡萄品種から取捨選択して絞り込みが始まる訳です。表現の中盤から後半になって紅茶の香り、丁子などのスパイス香と出てきますと、「あっ!これはシラーとかグルナッシュかな」と徐々の品種が限定され、酸化鉄、血液のニュアンスとくればもうおよそソムリエコンクールで上位に入賞するような、若しくは熟練したソムリエにとってはワインの素性が分かります。これがソムリエの能力となるわけですね!

 

    チンジャオロース             北京ダック

随分、香りで解説が続きましたが、味を見て見ましょう。まずは、タンニン(渋味)が円やかな第一印象です。とげとげしくなく、舌の上に乗ると渋みは収斂性といって口内が引き締まる感覚がくるのですが、このワインにはそれを余り感じさせることはありません。酸味も穏やかでマシュマロを口に含んだ感覚にも似た酸味です。しかしながら甘味を伴わないので純粋に渋味と酸味が調和してさらに触覚として感じるアルコール感は優しく,全体を包み込む自己主張の控えめな熱感として受け止めることができます。しかしながらアフターフレーバーにはやや香りの中に感じられた鉄分を感じさせる感覚や例えば黒い皮の葡萄の皮の部分だけをすり潰したような少し荒々しいニュアンスがありますので上品でありながらやや粗野なブレーバーも併せ持つ味わいなんです。ここが難しいところであり、ワインの醍醐味です。このワインは特徴のあるエリアで造られています。このエリアの気候、風土、土壌、作り手の考えがワインに影響してくることを、専門用語で、「テロワール」を感じると表現します。少し難しいですかね。

合わせる料理は、赤ワインでありながらこの複雑感、粗野でありながら繊細というニュアンスから私なら本格的な中華料理をお勧めしたいと思います。実はこのワインと同じワインで生産者違いのワインを私の婚礼の披露宴の中華料理で使いました。

このワインはシャトー・ヌフ・デュ・パープと言います。フランスの南ローヌ地方のワインで、土壌は石灰岩、赤い砂岩、野球のボール位の大きさの丸い岩がゴロゴロと転がるところに葡萄樹が植えられています。元々、昼間は日照量が多いのですが、夜になるとこの小さな石が昼間の熱を取り込んでいますから夜はこの石コロの保温効果で極端に冷え込みません。従って葡萄樹の中の樹液がよく循環して葡萄の果実に糖分ものって来ます。気候では乾燥した風がローヌ河沿いに吹きこれが更に葡萄果実を凝縮させて行きます。

この風をミストラルと呼んでいます。またこのエリアでは、法律で13種類の葡萄を混ぜて造っていいですよという法律があります。もちろん生産者に依りますが、単一の品種で造る場合もあれば、5~6種類、又は13種類全部使うという生産者、それぞれが決めます。つまり基本的なニュアンスは土壌からワインに汲み取られて味わいに反映されますが、葡萄品種の混ぜ方によって味わいを変えることができますよ!ということなんですね

。ちなみに使用可能13葡萄品種は、グルナッシュ・シラー・ムールヴェドル・サンソー・クレレット、ミュスカルダン、クノワーズ、ブールブラン、ピクプール、ルーサンヌ、テレノワール、ピカルダン、ヴァカレスになります。今、試飲しているワインはグルナッシュを中心に5~7種類を混ぜて造っているようです。

シャトウ・ヌフ・デュ・バーブの葡萄樹
シャトウ・ヌフ・デュ・バーブの葡萄樹

それではこの様なワインに合わせる料理はというと、フランス料理ではジビエ系のものが良いと思います。

ジビエというのは、家禽ではなく、つまり飼われたり、繁殖のために養殖されたりしない、自然の中にいる、鹿、猪、野鳥などを言います。私の尊敬するソムリエの方がジビエを説明するときに、「鉄砲で撃った野鳥」と一言で説明した時、「あ~やっぱり凄いわ!この人!」と思いました。こういう表現って、鹿、猪、野鳥なんて説明するよりよっぽど、聞き手にリアル感、想像力をかき立てると思いませんか?経験の差ですね!

フランス料理以外で合わせるならば、ゴマ油や、辛みが利いた中華料理の炒め物やコクのあるうま味のある調理法でも充分に対応できます。一度、試してみて頂けますか?

今回のワインは、1月号にてご紹介させて頂いたワインより少しお値段は上がりますが、この味わいでこの価格ならばご納得頂けるかと思います。ご贈答にもきっと喜ばれると思います。又、ご自宅で試されるのであれば、この文章を読まれながらお試し頂ければ味わいがよりみ身近に感じられると思います。

 

ワインはこちらでお問い合わせください。→  info@ofrance.jp

日本、未輸入のワインです。

( Châteaunuf du Pape Vieux Clocher  Arnoux & Fils  )

では、感染症にお気を付けて、ご自愛くださいませ。

 

By ニール