NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

ワインバトラー・ニールのライフワーク Part 23

お疲れ様!

お正月
お正月

ホテルに勤務していると、レストランでも朝食をやっていたり又フロント等に配属になると「夜勤」=「ナイトシフト」があります。簡単に言うと泊りのシフトですね。フロント等にはないのですがレストランではおよそ、その日の営業が終了するとまずはその日の後かたずけをします。その後、翌朝の朝食のスタンバイをします。大体、終了するのが夜中の1時頃になります。今では殆どなくなりなしたが、私がホテルに勤務を始めた頃は「お疲れ様」又は「お疲れさん」というのがありました。これは調理場の方が夜勤をするサービススタッフや調理場スタッフに作って頂ける夜食のことです。まかないとも言います。大概はその日廃棄しなければならない食材を上手に使って色々作って頂けます。サービススタッフはビールやカクテルを作って飲みます。この行為は純粋にホテルの私物を頂戴するのですから本当は宜しくありません。しかしながら暗黙の了解の様に「お疲れ様」が行われていた時代がありました。こんなことでは原価がコントロールできないと思うでしょうが、きちんと原価の範囲に収まってしまうので不思議です。からくりとしてはバブル期でしたので相当に原価を安く設定してあり、この従業員の「お疲れ様」は、今考えるとゲストが負担していたかのように思います。「お疲れ様」は三つの側面があります。

一つ目は、やはり適度にお酒も入り、親近感が湧くためコミュニケーションの場となるのです。この時、重要なのは同席するスタッフの上司がどれだけ博識かでサービス業の面白さを知ったり、知識の補填や信頼関係を築く礎ともなりうるのです。

二つ目は、この反対でデイリー業務しか出来ない上司と一緒になると話題は、酒・女・車・ギャンブルの様な低俗?な話題となり将又、上司の悪口や気に入らないゲストの悪口等がポンポン出てきます。聞くに堪えないものも多いです。さらに過度な飲酒により酩酊状態となり暴力を振るったり説教が始まったりします。又こういう上司は「お疲れ様」を好み、「お疲れ様」に出たくない、今日は明日のことを考えると早く寝たいと言って参加しない部下には、飲みにケーションがとれない生意気な奴として容赦なく評価を下げたりしますから手に負えません。また次の日、酒臭い状態で朝食をサービスしますからわかっている、若しくは気が付いているゲストには大変申し訳ないくらい気分を害されたかと思います。そしてバブルが弾けた頃でしょうか、経費見直しという

ことでこの夜の「お疲れ様」=「飲み会」はどのホテルでも問題、話題となり中止、禁止となりました。今考えれば至極当然の話です。

ソムリエの場合、良くゲストの飲み残しで味を見る等と言われていますが、それは正確ではありません。何故なら業者さん達が定期的に試飲会や勉強の場を与えてくれるので、又良心的な業者さんはサンプルを持ってきてくれたりするのでゲストの残したワインをすするようなことは余りしません。ただしハイエンドなワインはこの限りではありません。

以前にもお話致しましたが私の上司にHさんと言う方がいましたが、「お疲れ様」の時は、カナディアンクラブのソーダ割りを好んで飲みました。後はグラスで残ったワインは良く飲ませて頂きました。その時に居合わせると、必ず、このワインはどんな料理に合うと思う?と必ず言われます。この時に変なことは言えませんから至極まっとうな返答をすれば、「つまんないなぁ~」なんて言われたりしますが何せ知識が不足していますから仕方ありません。しかしこの状態で辛抱して色々聞き出さないと、血となり肉となる知識は付きません。先輩の一人に、Nさんという人がいましたが、Hさんが話を始めると何処かに逃げてしまう先輩がいました。この方はやはりこういう場で知識が深まることを知らないというか又知らない自分が恥ずかしいと感じるためか其処にいること自体が嫌なのでしょう。しかしこういう先輩の話を聞いて居ずらくとも其処にいないと成長出来ません。やがてこの先輩もソムリエとしての会話が出来ず辞めていきましたが・・・残念なことです。

上左・まかないでよく出たパスタの大森 上右・生ハムの山

下左・大漁旗 下右・犬才の置物

三つ目の側面は、この「お疲れ様」で作られる食事はコックさんの中でも格が下の方がつくるので研究の場でもあるのです。その中の一人、Iさんとうい方がいました。良く色々作ってくれましたが、私達が食べ始めると必ず、「味はどう?」「隠し味、分かる?」等、聞いてきます。ただ「美味しいです」っていうのはこの場合通用しません。どう美味しいのか?見た目は?等、作って頂いたお互いのプロの礼儀として答えるべきなのです。ある時、生意気に「もう一塩欲しかった」と言いましたら、私の上司のHさんは、「おまえそれは答えになっていない!」と言われました。テーブルにカスター(塩こしょう)があるので微妙な味付けは好みの問題であるので答えになっていないということです。味の付け方が優しい、印象的な歯ごたえ、テーブルを彩るカトラリーに勝るなど色々言い方はあるだろう!ということなんです。つまり三つめの効果としては舌が磨かれる、感性が鋭くなるということです。私達、レストランに勤務する人間やワインを扱う人間はこうして味覚や感性を磨くことができる側面があるのは確かです。

さて、「お疲れ様」は今は無くなりましたが、良き側面も色々ありました。懐かしい時代ですね。やがてこのコックのIさんは、中野のある調理師専門学校

の校長先生になりました。Hさんは昔のヨシミで定年後、ここの学校のワインの授業を受け持つ講師をしています。振り返れば、あのころは、みんな、みんな、仲良しでした!!

ところで、最近、ある伝手で、フランス在住の女性と知り合いになりました。ずっとメールや電話のやりとりで色々とご相談させて頂きましたが、先だってようやく日本でお目にかかることが出来ました。この方はワインの取引を生業としておりますがワインを見抜く力が凄いのです。兎に角美味しいワインを何処からか探してきます。もちろん美味しいものにも精通しています。その方からお土産と言って生ハムを頂きました。又ワイン何本が送って頂きましたこともありますがどれもピカイチです。生ハムはイベリコやマンガリッツア等色々食べましたが、頂いた生ハムは、薄い塩味で上品、身も変に赤茶けていなく見事なピンク色、生ハムには余りふさわしいとは言えませんが敢えて表現するのならフィギュアスケターの様に優雅で繊細、痩身でいて引き締まった味わいです。私は「お疲れ様」や検食、ゲストに連れ出されて美味しいものを私なりに理解はしていると思いますがこのAさんは感服してしまう程の方です。私は以前、見●●夫、山●●●などサービスしました経験がありますがグルメ評論家のような方なら佐●秋●さんが今でも一番だと思っていますが、本当に良いものを見極める力のある方はマダマダたくさんいるのだなぁと感心致しました。またこの様な方は何処でどうやってこういう感覚を身に着けるのか知りたいと思いますので今度、伺ってみます。きっとこれを読んでくれて笑って居るかも知れませんね!

話は変わりますが、今、私は箱根にいますが、こうやって過去を振り返る時、出会った色々な方達はどうしてるかなぁ~と思います。

鏡もち
鏡もち

「夏の花火のように、消えて散るよなもん~じゃない!幼いころの大事な宝物だけは、ずっとこの胸に抱きしめて来たのさ!夜の酒場でロンリー、あの子今頃ど~してる?サナギは今、蝶になってきっと誰かの腕の中。」(桑田佳祐・若い広場より)

 

by ニール