NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

ワインバトラー・ニールのライフワーク Part 21

潰れる法則

秘密のゲストハウス
秘密のゲストハウス

1990年代、私は以前記したことのある上司のHさんの元でソムリエとして働いていました。Hさんはソムリエコンクールで優勝したこともあり、その当時は色々な方のサービスを担当しており、主にVIP専門にサービスの担当をしていました。又色々なところから講師の依頼も受けていたので大変多忙な毎日を送っていました。しかしながら、人柄も良いので、依頼される業務も許容量を超えていたので、オハチは私のところにも良く回って来ました。

今、考えると良い、こづかい稼ぎになっていました。そんなある日のことでした。

上司のHさんから「あのさぁ~、ちょっと最近、忙しいんだよねぇ~」(いつも話しの切り出しはこんな感じなんですが・・・)「悪いんだけどM証券の会長さんがさぁ、白金のゲストハウスに来てさぁ~、俺にサービスして欲しいっていうんだけでさぁ、俺、その日忙しくていけないんだよね~、だからさぁ~、おまえ行ってくれる?」というこんな感じでお願いされました。

いつものM証券の会長の会食はお店にきて頂けるのですが、聞かれては困る、見られては困る時、このM証券が白金の高級住宅地のマンションのワンフロワーを借り上げていてここに国賓級のVIPを呼んで会食される状態でした。

M証券は日本でも有名な証券会社ですし雑誌やフライ●●などの写真週刊誌に撮られては困るということですね。Hさんは「ギャラはさぁ、悪くないから、3時間辛抱してよ!」と言われましたが、「大企業がゲストハウスってどんなところだろう?」素直な私の感想でしたので二つ返事で引き受けました。

19:00からの会食でしたが早めに行って打ち合わせをしましたが、白金のマンションの裏口から入って確か、3階に上がるとホテルのレストランのエントランスより重厚な扉にまず圧倒されました。広いキッチン、200~300本は、入るワインセラー、30畳はあるリビングに革張りのソファー、20人は会食できるダイニングルーム、住み込みの中居さんの部屋すら8畳くらいはあり、私達が待機する控室も完璧でした。

食事は、●○軒のケータリングでコックさんが2名、給仕人は3名の他、コンパニオンが2名、そして私がいました。ホスト側は会長を含め4名、ゲストはベ●●ーの大使クラスの方3名だったように思います。証券会社の仕事って良く分かりませんが、会食が始まる前に、リビングソファーでドンペリニヨンのサービスをしましたが、流石に、そのころの私は、未だふてぶてしくなかったので、どきどきしながらサービスして会話の内容までは覚えておりませんでした。

証券関係ではインサイダー取引が違法ですが、そんな話よりもっと重要な話をされていたのではないかと思います。そして会食が始まりました。豪華でありながらシンプルでワインも高級ワインをサービスしましたが、不思議とドンペリニヨンくらいしか思い出せません。サービスが終わりゲストのお見送りが終わると、ご苦労様と言って、秘書の方からタクシーチケットと封筒を渡されました。きっかり3時間で、封筒には5万円が入っていました。秘書の方から渡された時、「ここで聞いた会話はもちろん他言しないでくださいね!」と一言だけでした。

私は、緊張していましので実は何も覚えていないというのが本当のところでしたが、きっと、余り宜しくない内容だったに違いありません。もちろんその年の源泉徴収表も来ませんし、ポケットマネーで支払われたことになりますね。このような経験は初めてでしたが、こういうことは良く行われているのだなくらいには感じていました。

 

 

 

 

お金を湯水のように使う

代わってNファイナンス取締役副社長Kさんという方もお店の常連でしたが、この方は兎に角、高飛車なものの言い方をしますが私は何故か可愛がられました。

基本、私達ホテルマンは口が堅いので、好かれると常連になって頂けます。近年では、東京のウ●●テ●●ホテルで芸能人が会食されているところをSNSで上げた従業員がいて、ホテル側が謝罪していましたが、昔はそんなことはありませんでした。Nファイナンスの方はどんな会食でも必ず自分の女性秘書(美人)を同席させていました。最初は会食が終わると、おとなしく?お帰りになられていましたが、使いなれた頃、そのうち会食が終わると、お部屋を抑えておりそこにお泊りになられていました。レストランの業務が終わって身支度をしていましたら、急にルームサービスから連絡がり「Nさんがお部屋で呼んでいますから、ワインを持って行って下さい」との事でした。お部屋に行きましたら、Kさんと先ほどの秘書の方がお部屋にいました。

今でも目に焼き付いていますが、その秘書の方が、ちょこんとベットの上で可愛らしく正座していました。Kさんは、固く結んだネクタイを片手で乱暴にほどきながら、「今日は、美味しいワインとチーズで楽しもうね!」と言っていました。全く、テレビドラマか映画のワンシーンの様でした。私はさっさと赤ワインをデカンタに移してお部屋を後にしましたが、何だかなぁ~といった気分でした。

 

上記2名は、どう考えても会社の為に、経費を使っているとは思えませんし、反対に会社の接待費を使い、自己の利益の為か後者の様に、遊興に励んでいるとしか考えられません。私はワインをサービスしている立場は変わりませんが、こういう場面は数多く経験させて頂きました。そして必ずと言って良い程、高い確率でこういう方達は失脚するか、会社は潰れてしまうことを目の当たりにしてきました。

 

M証券はその後、インサイダー取引にて会社は一度、潰れるまで追い込まれました。Nファイナンスの方も、個人の使い込みが明らかになり又会社は縮小しM&Aされてしまいました。

私達の頃は、証券マンというのはノルマがキツイけれども給料は良いとされていました。おそらく若い方達は会社の業績を上げるために身を粉にして働いていたんだと思います。しかしながら、上に立つ人間、特に役職がトップクラスになる方達が出鱈目をすると会社はすぐにガタガタになります。

特に、都内の著名な高級ホテルに勤務していると、一般のゲストの他、こういうハイソな方達もサービスする機会が増えますので、高級ワインを自腹で飲む方は別として接待費で落とす様な方達は往々にして失敗することが多いようです。

もちろん全部が全部という訳ではありませんが・・・。私が学んだのは、「超高級ワインを湯水のように交際費で落とす会社役員がいる会社=潰れる可能性が高い」ということです。普通ならば予算がありますし、ブレーキをかける人がいてしかりなのですが、ブレーキなんてかけようものなら反対に何処かに追いやられるのかも知れませんね。超高級ワインを自腹で飲む方、もちろん沢山いらっしゃいますよ。でも、そういった方達は、凄く大人しい紳士な方が多いのも事実です。

 

ところで、今年の秋はどうでしょうか?紅葉はこれからだとは思いますが台風が多かった前半のための影響がでるのではないでしょうか?●●●の秋とは色々と言われていますね!外食を伴うホテル業は食べ物から秋を感じることが出来ますね!そういえば先日、マツタケの網焼きを食べる機会がありました。合わせるワイン?そう!こういう話を最近、めっきりしなくなりました。すみません!!!炭火で炙って水が出始めたら、食べごろでスダチを絞って頂きます。ポルトガルのヴィニョヴェルデという爽やかな白ワインがマツタケの風味を引き立て美味しく頂けます。

ヴィニョヴェルデですか?リーゾナブルで綺麗な造り方をしたワインです。値段は様々ですが、1000円前後からあります。高い食材だから高いワインで合わせるなんて法則はないんです。気軽に楽しみましょう。

 

 

 

ホテル

 

 

By     ニール