NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

ワインバトラー・ニールのライフワーク Part 18

シリーズ 上司 3

クリティカルシンキング
クリティカルシンキング

「執行役員F」副題・・・ビジネス文章力を鍛える

私がホテルを辞めてから、ある会社のレストランマネジメントの事業本部長兼ワイナリー・ホテルの担当顧問をしている頃に上司になった方のお話です。

レストランマネジメントの事業本部長の上には常務執行取締役というポストがありまして会社によっては様々な形態がありますが、私が担当していたレストランマネジメントというのは東京エリアに15店舗、関西エリアにフランチャイズ、直営含め10店舗以上のレストランやバー、宴会場、スイーツ等を受け持っており、業務の進捗を経営執行会議で毎月、このF執行役員同席の元、代表取締役の社長他、グループ会社の本部長が全員の前で、順番に、業績進捗を発表しなければいけませんでした。

執行役員といってもレストランやバー等の経験はない方でしたので、「すべて、あなたに任せる!」と仰っていましたので、今、鑑みると結構、自由に何でも出来た様に思います。しかしこのレストランマネジメント(今後は略してSRMとします)はグループでは赤字会社ですので、売上改善、利益改善を厳しく求められました。

最初の一年目は、部長として着任しましたが二年目は事業本部長になってからは必死でした。二年目の第二四半期まで、利益改善が順調に進み、ついには増収増益を果たすところまで来ました。

どぶ板営業と呼ばれる作戦で現場にも足しげく通い疲れていましたが、社長と副社長に呼ばれ、「頑張れ!このままフニッシュしたらSRM始まって以来の快挙だから、社長賞だっ!」などと煽て?られました。

しかしながら第三四半期に大きな案件を取り逃がしたためにこけてしまいました。第四四半期は何とか前年はクリアしましたが、この取り逃がした案件のため、結果として減収増益として終わりました。明けて翌年、このF常務が管掌役員として私の上に着任しました。

F常務は、ロジスティックスの専門家で色々な事業を立ち上げが得意でしたが、SRMの業務改善策としては、マーケティングが重要と考えて、お金をかけて外部からのコンサルを入れようとしていましたが、私は反対しました。F常務が紹介してくるコンサルも皆さんマーケティングのプロですが、パワーポイントを使って上手に説明し、素人が聞いていると『なるほど~』と感心するでしょうが何年もこの商売をしていると、そういうことは現場に立って仕事をした経験が浅いな!とすぐ分かります。

第一に人手不足なのに、メンバーシップ会員を作ってダイレクトメールを携帯やスマホに送るとか、そんな当たり前のことを、さも、会員を増やせば売上増加とか、図を使って説明してきます。ロジカルシンキングと遂になる言葉でクリティカルシンキングと言うのがありますが、この手法で考えると穴ぼこが良く見えます。では、クリティカルシンキングの一例の図を張り付けて置きます。

この図『世代別懲戒処分者数』が円グラフで示されていますね。

まず、良く見て見ましょう。30代と40代は同じ数なのに30代が多く見えませんか?又10代~20代は97人、50代は94人で3人しか差がないのに10~20代が凄く多く見えませんか?なんでも疑って掛からないと話し手に術中に引き込まれてしまうのですよ!これがプレゼンテーションが上手い人のやり方です。

こう言う考えを持って事象を分析する事をクリティカルシンキングと言います。

話は戻りますが、コンサルは提案は上手ですが、責任をとってくれません。私は、F常務の申し出を断り続けていました。F常務も『こいつ、俺の言うこと聞かないな❗』位に思っていたと思います。

  ピンクは食べられます。           紫は食べられません。

そんな時に、事件は突然起きました。私の担当しているSRMの店舗で唯一のスイーツ部門から、ピンホールが出ました。

ピンホールとは、お菓子のマドレーヌの包装に穴があいて、ビニールの内部に酸素が入り中のマドレーヌがダメになってしまうことです。

酸化が始まることを見抜くシートがピンクから紫になると酸化した証拠になります。

実際はカビが生えてなければ大丈夫ですが、このシートで紫になったら売り物にはならないのです。大量に受注を受けていましたので、レシピを渡し下請けの業者に任せてしたために普段の不注意と相まって大変な金額の損害を出しました。

関係各部署のお詫び対応を一晩で文章にまとめなければなりません。

徹夜が続きました。本当に過労死じゃないですが当時は死に物狂いで文章に取り組みました。

F常務は私が何をして良いのか解らない時、的確な助言と文章を次々にこなしてくれました。本当に有り難かったです。事態は収拾してからF常務は、私に対して『君は現場サービスと優れた指揮感覚はあるがマネジメントの手法やビジネス文章の書く力が足りない』と想ったらしく、その後は文章という文章は書く度に突っ返されました。

例えば設定した数字が週単位で達成できないと出来なかった理由をつらつらと書きます。そうすると、これは『ただの職務認識不足』として赤を入れられて突っ返されます。それが毎週ですから、ほとほと嫌になります。

しかしF常務は一度だけ、こう書くのだと言って見せてくれました。

それ以降はすこしづつまともな文章が書けるようになりました。

そしてある時期を越えた時には、他の事業本部長に、『君の書く報告書が一番グループの中で分かりやすく洗練されている』と誉められるようになりました。

現在ではあるところで勤務していますがビジネス文章力で困ったことはありません。

F常務のお陰ですね。

今では別々の会社に転職しましたが、たまにあの頃の事業本部長クラスと役員だった仲間と集まって飲む機会がありますが、あの頃が懐かしいと本当に思います。

赤坂の居酒屋で行き着けの店がありますが、主にマネジメントの話や株価の話が多いですが残念ながら私は株はやりません。

そのお店で白ワインをグラスで注文しました。私は『この白ワインはヴァンドペイドックのシャルドネだな❗』と思いながら飲んでいました。

店を出るときにグラスワインを確認しましたら見事に当たっていました。その時、私は『あ~まだまだソムリエとしての利き酒能力は落ちてはいない。長く仕事として身につけたものは残っているものなんだな。』と思いましたがその力とマネジメント力は別物です。

利き酒力はただの自慢にしかならないけれど、マネジメント力は日々研鑽を積み磨くものであります。勿論、利き酒力があることも研鑽を積んで身につけるものですから大事なものですが、、、。

ちなみにSRMは私が退職してから3年後、業績悪化しグループ会社の他、事業部に吸収され、スイーツ部門は潰れてしまいました。

 

上司シリーズはこの回で終わります。

 

by ニール