NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

ワインバトラー・ニールのライフワーク Part ⒓

会食 食事也

高級ホテルでは、前回も製薬会社の接待に付いて少し記させて頂きましたが、他にも色々な方々の接待の他会食、食事もありましたので今回はそれらで印象に残るものを、少し触れてみたいと思います。全て実在したお話です。

 

プロポーズ

これは映画のワンシーンのようなものですが、もう20年も前にあったことですが、自称、日本で5本の指に入るコピーライターS さんがレストランを懇意に良くご利用され始めた頃のことでした。頻繁にチップも弾んでくれて、いつもブルックスブラザースの洋服を着ていて感じはいい方でした。ある日のこと、『悪いんだが、今度、女性を連れて来るからドン・ペリニヨン出してくれる?それで最初の一杯目は裏で注いできてそのなかにこの指輪を入れて持ってきてくれる?』と言ったお願いでした。私は直ぐに『分かりましたが、指輪は衛生上、軽く洗いますか?』と訊ねましたら、『300万円位だし、飲むわけじゃないからいいよ!』と。見たらダイヤギッシリの凄い指輪でしたが、、、『今度って何時ですか?』と聞いたら3日後とのことでした。当日は出す、こちらのほうが緊張しまくりましたが何とか出してプロポーズも受けて頂けたようでした。ドン・ペリニヨンにダイヤを入れてプロポーズ、皆さんはどうでしょうか?Sさんは今はどうしているのでしょうか?

        正月飾り

所払い

政治家や芸能人の方も良くお忍びでご来店されました。ホテルマンは口が固いので、殆どサービス中はゲストの会話が嫌でも耳に入ってしまうので仕方ないのですが、誰にも口外しないと思います。私もMさんという衆議院議員の遊び話は良く耳にしましたし、当時は本当かなと思う位、ある意味、自由人でした。レストランには、親しい友人と白●合女子大の愛人と良くいらしてましたし、兎に角凄かった。エピソードを書くとバレてしまうので書けません。残念。

又中国から国賓が来るときに誰が襲うか個室で相談している●暴軍団を、右翼の大物が嗅ぎ付けてなだめたり説教したりしていたシーンも忘れられません。でも読者の皆さん、疑問に思いませんか?そんなところにいて内容を聞いていてもそこにいることが、聞いていることができるホテルマンという存在が。それだけ口が固いのです。

ある芸能人で私の顧客であった方もアルコールの程度が基準値を越えて来ると完全に犬になります。(笑)

深刻な話から笑い話まで様々ですが、国家権力機密事項になるとさすがに、所払いされます。具体的には『こちらがいいというまで入らんでくれ!』と言った塩梅です。これは一度だけ経験しましたが、元外交事務次官の方とある大物の会食会談でしたが、所払いされました。聞かれては困ること=悪いこと。とは限らないのですがその辺はご想像にお任せ致します。

                          七福神

逮捕

又顧客のなかには、本当に散財するようなお金の使い方をするようなゲストもいました。

私の先輩の顧客でしたが毎回違う女性と来て二人で100万円単位でお支払いをするようなゲストでしたが、ある日のこと、東京湾花火大会がある日、私の先輩が休みなので私にお鉢が回って、花火大会が見えるスカイラウンジの席をおさえてくれとのことでしたのでラウンジのマネージャーに連絡しておさえることが出来ました。ご来店されたら、『有り難うね!』と言って5万円チップを頂きました。

今では考えられませんね。その方は穀物相場を取引する仕事をしていましたが、ホテルを3年位使った頃のある日のこと、テレビを見ていたら詐欺横領2億円で警察に連行されるところを見てしまいました。

相場を見て売り買いに失敗したというよりは集めたお金を殆ど遊興費につぎ込んでいたとのことでした。遊興費のうちの5万円は私がもらった?ことに⁉お金って怖いですね。その他色々な方たちがいらっしゃいましたが本年も折に触れて少しずつ記して行きたい思います。

少し年初から変な綴り方をしましたが、ここからが本番です。

        シャンパーニュの泡を表現した言葉を落とし込む!

ワインの表現

昨年、永澤さんとある試飲会でお会いしました。丁度、シャンパーニュ試飲しているところでしたが久しぶりでしたのでご挨拶しましたが、試飲しているシャンパーニュどう文章に表現しようかな?と思っていたので永澤さんにシャンパーニュ泡を見せて、この泡の表現は⭕⭕⭕⭕にしようと思うんだけど、どうでしょうか?と聞きましたら、あなたその感性には付いて行けないと言われてしまいました。

ソムリエとしてワインの表現を文章に起こす場合、気を付けていることがあります。もちろんソムリエとしての定番の表現は使いますが、私の場合、思い込みで判断するのをやめて意識で捉えた現象そのものを丁寧に観察して記述しよう、判断はそのあとにしようというスタイルを固持しています。

これはドイツの哲学者フッサールが提唱した現象学によるものだと最近知りました。例えば目の前に一杯のグラスワインがあったとします。そうすれば誰もがそこにワインが存在していると思うでしょう。

実はそうではなく自分の意識のなかにワインがあるだけかも知れない。ワインが自分の意識の中に現れたから『ワインがある』と思っているけれど自分の意識の外には無いかもしれません。となるとワインは自分の主観の中に存在し主観の外には無いかもかも知れないことになります。

その人が見ている世界はその人の主観で見ている世界ではないか?ということです。そこで目の前にグラスワインが見えると『ワインがある』と思うでしょうがワインが『ある』とことを一旦カッコに入れて判断停止してやめてみるということで『ある』と決めてかかることをやめて見るということです。

これは『エポケー』と呼ばれ『判断停止』の意味です。

現象学では、現象そのものを丁寧に観察して記述することも大切にします。

ワインが目の前にあれば『あぁ、ワインがあるな』で済ませるのではなく一旦、『ワインだな』という意識を取り去って、そのワインを丁寧に観察して記述してみるのです。

例えば画家がバナナを描くと仮定します。ちょっと青さが残るバナナもあるし黄色い熟れたバナナもあるでしょう。丁寧に観察して見ると多くのことにき気づきます。こうして考えると画家は現象学を実践していると言えます。

『バナナは黄色い』と思っているのは思い込みであり決め付けになります。

又画家が花を描くときに花という現象=意識で捉えた対象を描いていると思いますがそれだけではなく花の本質を描こうとしているのではないでしょうか?そうして描かれた花の絵には作者が本質直感で得た本質が描かれているように思います。

素晴らしい絵を見ると人は感動しますがそれは必ずしも写真のような絵である必要はありません。

実物の花でなくともその花の本質が生かされていればその絵には生命が宿るでしょう。

ワインの表現も同じです。外観、色合い、香り、味わい、アフターフレーバー、様々な角度から観察して見る。すると時には邂逅の念が懐かしく浮かんだり、定番の表現から枠を越えた表現が浮かんだり不思議と面白い言葉が浮かんだりします。そして一旦、文書化しますと、私が記述した、そのワインの本質とは行かないまでもそれに近い伝える表現が産み出されます。

それは他のソムリエやワインジャーナリストも同じかと思います。

 

年頭からご挨拶代わりに記しました。

色々な話で思い付くまま綴りましたが、今年も宜しくお願い致します。

 

Byニール