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2014年12月号

日本酒道楽・酒好一男 第17回

山田錦

今回は酒肴、いや趣向を変えて「山田錦」についてご紹介しましょう。

 いわずとしれた酒米の大定番。このコメがなければ日本酒の進化もなかったといえるほどです。ただ、酒米といってもコメですから国の生産制限がありますので、いくらでも作れるというわけではありません。

 そのせいで、山口県「獺祭」の旭酒造が海外輸出のため機械化・大量生産するにあたって、山田錦を買い占めているという噂(?)が流れ、周囲の酒蔵も山田錦が手に入りにくくなっているという噂(?)もあるほどです。

それではなぜ、山田錦の争奪戦が行われるのでしょうか?

答えは明白で、1911年から毎年開催されている「全国新酒鑑評会」で最も高い評価である金賞を獲得する製品の大半が「山田錦」を原料としている酒造好適米だからです。

兵庫県で生産量の8割

それほどの人気を誇る山田錦は、大正12年に兵庫県立農事試験場(現:兵庫県立農林水産技術総合センター)で山田穂と短稈渡船という酒米を人工交配して作られました。そのコメは産地適正米とされ「山田錦」と名付けられました。

総じて酒米は大粒でたんぱく質が少なく主食用に向かないと言われていますが、山田錦も例にもれず、コメとして食べるにはあまりおいしくないようです。

山 田錦は兵庫県でその生産量の8割、とくに六甲山地の北側に位置する三木市吉川町や加東市社(やしろ)などの丘陵地帯の棚田で栽培されています。日当たりが よく夏季の昼夜の温度差が大きいこと、土壌が粘土質で水はけが良いことなどが作付けの条件が多く、背丈が高く倒れやすいなど手間のかかる品種です。

三木市、加東市の一部で取れるものは「特A地区産山田錦」とよばれ、もともと高い山田錦のなかでも最も高い値段がついています。
 しかし、この「特A地区産山田錦」は、古くからある灘の酒蔵でそのほとんどが使用されていて、新しい蔵が入る余地はなかなかないそうです。

日本酒の消費量が落ち込んでいた時期も購入を続けてきた老舗蔵ですから、農家の方々もそちらを優先するのは当たり前ですね。

 

クール・ジャパン政策で増産?

そんな需給バランスの悪い山田錦ですが、海外の日本酒ブームのたかまりにつれて、ここ数年ですごい伸びを示している日本酒の輸出に支障をきたさないよう、農水省は2014年度から酒米の増産分を生産調整の対象から外しました。ですが、ただでさえ栽培が難しく、さらに日本酒ブームが去ったときの米余りを危惧する農家の方々が増産に二の足を踏んでいるため、需給のバランスがとれるまでは時間がかかるかもしれません。

その日まで酒好きな私たちは、山田錦だけでなく、さまざまな酒米を愉しむ余裕をもちたいものです。

今年も1年、お世話になりました。

また来年、美味しい日本酒に出会えますように。

酒をこよなく愛す、酒好 一男

2015年も、酒、ワイン、を多く取り上げていく予定ですので、酒好 一男のエンターテイメント情報を期待してます。 お疲れ様でした。
 Nagasawamagazine・編集長