NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

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日本酒道楽・酒好一男 第12回

低精米な日本酒

みなさんは吟醸と大吟醸の名称が米の精米歩合によって分けられているのはご存知でしょうか? ともに同じ吟醸造りながら、大吟醸は精米歩合50%以下、吟醸は60%以下とされているんです。

 これまでは、「獺祭」「黒龍」などの評価の高い、高精米の酒蔵の影響もあって、削れば削るほど澄んだ味わいの日本酒が生まれると言われてきたため、各酒蔵も技術の粋を集めて米を削ってきました。私が見た中で精米歩合のもっとも高いものは「風の森 ALPHA TYPE 2」の22%です。それまでは「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」が23%でもっとも高かったのですが、まさかの奈良県「風の森」がトップに立ちました。

風の森

まさかというのも、この「風の森」は低精米の日本酒で有名な蔵で、「風の森 純米しぼり華 雄町80%」や「風の森 純米しぼり華 露葉風70%」など、雄町を80%精米で純米酒を醸すなど、挑戦し続ける酒蔵だからです。

低精米の日本酒は、でんぷん質が多いため雑味があるとされてきました。ただ、かつての日本(江戸時代以前)では、技術がなかったため低精米が当たり前でした。そのかつての製法で日本酒を醸そうという酒蔵が増えてきています。

「風の森」の他にも山形県の「上喜元 純米 出羽の里」、滋賀の「七本槍(しちほんやり) 純米無濾過生原酒」、「獺祭」と同じ山口県の「貴(たか)濃醇辛口純米酒」など、精米歩合80%の純米酒が有名になっていますが、私の贔屓な蔵のひとつ、青森県は八戸酒造からも精米歩合88%の「陸奥八仙HFK88」が限定発売されたので即購入。味見をしてみました。


HFK88

青森県産華吹雪(はなふぶき)という米を12%だけ削って醸造されたこの純米酒ですが、私のイメージとしては、精米技術が発達していなかった時代に近い精米歩合ということで、てっきりドブロク的な色合いや味なのだと思っていました。

以前は水を使っていたのだと思いますが、最近の時代劇を見ると、戦国武将が飲んでいる酒がちゃんと白濁しています。精米技術だけではなく、濾過の技術も遅れていたのですから、平清盛やら源頼朝の時代、織田信長、豊臣秀吉ももちろん、徳川将軍もけっこう後のほうまで白濁した酒を飲んでいたはずです。時代考証もそのくらい細かくなっているのですね。

話が脱線しましたが、もちろんこのHFK88は現在の精米技術、濾過の技術で造られていますので、まったく白濁しておらず、澄み切った透明の酒となっています。米のでんぷん質が大量に残っているので甘みが強いのかと思いきや、香りがいい上に、アルコール度数が14%に抑えられているせいか特別純米酒のようなキレもあり、とてもおいしい味わいの酒でした。


編集長から

米の削りかす(ぬか)が少ないので精米せずにこのような味が出せるのなら、食べ物を大切にする意味合いでこちらに流れていってもいいのかとも思いますが、極限まで削った大吟醸の味わいも捨てがたいので、両輪で進化していってほしいものです。