日本酒道楽 49
川中島の酒 酒好 一男

第48回に引き続いての、酒好一男です。
今回は信州旅行の初日の午後のミッションです。
初日のミッションその1「小布施ワイナリー」を後にした私は、ふたたび長野駅に戻り、今度は「しなの鉄道」に乗りました。しなの鉄道は第三セクターの鉄道会社で、篠ノ井から軽井沢を走っており、長野から篠ノ井まではJRの信越本線なのですが、便宜上しなの鉄道が運行しているようです。

長野駅から3つ目のJR今井駅で下車します。
ここは長野オリンピックのときに選手村があったところだそうで、開催に合わせて開業した比較的新しい駅です。まさに川中島古戦場に近く、車だと10分ほどで着くところです。
そんな今井駅を降りると、駅前にはなにもありません。
畑が広がり、地図を片手に少しあるくとありました。目的地の「酒千蔵野」です。酒好がこよなく愛する「川中島幻舞」を醸す蔵です。
もともと千野酒造場という名前で営業していましたが、代替わりをしたところで名前を「酒千蔵野」に変更したそうですが、「千野酒造」という名前の順番を入れ替えただけというのが面白いですね。
1540年(天文9年)に開業した長野県では最古、全国でも7番目に古いの蔵で、武田信玄に酒を献上した記録があるそうです。創業477年ですから、すごい企業ですね。

写真・歴史のある樽。左上にちょっと見えるのが杜氏の千野麻里子さん。
杜氏は女性の千野麻里子さん。
蔵元の一人娘として東京農大に進み、国の研究所で研修した後、先代杜氏の急病で急きょ杜氏に就任しました。
もともと桂正宗という銘柄を地元中心に販売していましたが、チャレンジャーとしての資質があったのでしょう。
新しい銘柄に挑戦し、「川中島幻舞」という香り高く、味わい深いのに飲み口はスッキリしている素晴らしいお酒を完成させました。
長野県の米、美山錦はもちろん、山田錦、雄町などを長野県の酵母を中心に醸したお酒は数々の賞を受賞しています。
現在も挑戦は続いており、私も新たな味わいを期待しています。

写真・受賞した数々の日本酒
東京で買える店が近くにない。
しかし、残念なことに現在のところ、私が「幻舞」を味わっているのはいつもの名店でだけなのです。
名店では常に用意してくれていますが、家の近くに取扱店がないのです。
ですが、酒蔵見学をさせていただき、家付き酵母の働き、米の溶け方は毎年違う、など興味深いことをいろいろうかがうことができ、さらに幻舞愛が増しました。
麻里子杜氏も醸造アルコールを添加したいわゆる「アル添」がお好きだとのことですが、もちろん酒好もかねてからお伝えしているように「アル添」好きです。
見学の後、試飲させていただいた特別本醸造はまさに一気飲みできるくらい私の好みにドンピシャでした。
生産量が少なく、名店のソムリエ鈴木さんもこのラベルは見たことがないということで、ちょっと鼻高々な感じだったことを付け加えておきます(笑)

写真・川中島幻舞 特別本醸造
その他、私が飲んだことのある幻舞はこのようなラインナップです。
写真・左から
純米吟醸 無濾過生原酒、吟醸 美山錦、純米吟醸 雄町 無濾過生原酒、特別純米 山田錦 無濾過生
意外と飲んでますね(笑)そしてこちらは幻舞の名は冠していませんが、川中島 純米吟醸スパークリングです。それと酒千蔵野で一番生産量が多いという、純米にごり酒。
幻舞にしてもスパークリングにしても生産量が多くないので、なかなか飲める機会がありませんが、目にしたら必ず飲んでいただきたい逸品です。
酒好一男でした。