NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

美の才人   大内順子 さん    編集部

日本のファッションを創り上げた人

「美の才人・大内 順子さん」

      ファッションを創り上げた才人

 

黒のサングラスがよく似合っていた。

ファッションをこよなく愛し、その本質を優しく伝えてくれた「美の才人」大内順子さんは、ファッションの心を、どう伝えたらいいのか、女性たちが如何にファッションを理解してくれるのか、そして、日本から世界に通ずるファッションが生まれてくることを願っていた。

 

僕は何度かパーティでお会いしていた。

勿論お話をする機会もなく、ごあいさつ程度だった。

そんな時、NHKでファッション番組企画提案する機会があり、お会いして、お話をする機会に恵まれた。

熱く、精力的に、ファッションに対してのお話は、感動的な提案を含めての、大いに盛り上がりを見せた、しかし、具体的な番組にはならなかった。

その後も、ときどき、お話をする時間をいただき、嬉しく感動あるお付き合いをさせていただき、感謝していた。

そんなときに、「上毛新聞社・カルチャーフォーラム」をプロディース機会に恵まれ、大内順子さんに講演を依頼した。

快く、承諾していただき、平成5年5月22日講演が実現した。

その時の講演内容をも一度、お伝えしたい。

 

残念ながら、2014年10月30日にお亡くなりになられた。

 

「これからの時代とファッション」

 

1993年秋冬は「変化」がテーマ

ファッションというには無くては生きていけないというものではありませんが、少し深く知ることでも面白いし、いろんな形で時代の理解にも役たちます。「70年代」「80年代」のふぁっしょんは「闘い」が基調で、戦争、力、強さが表現され、肩パットが入って体の大きさを強調するようになっていました。アルマーニやベルサーチの名前が知られ、男の背広を原型にして強さを打ち出していました。

ファッションモデルも、八十年代は175センチ以上の大きくたくましい人が求められました。

強さの表現が支配的になって、極限にまでいった結果、90年年代は戦いに対して平和、強さに対してやすらぎと優しさという方向に変わってきました。

ファッションは世の中の動きより、三年ぐらい早く表れるので、88年からこの優しさという傾向に変わりました、この傾向は2008年くらい続くものと思われます。

 

「平和の環境がファッションの新しいテーマ」

 

ここ数年間のファッションの動きは、時代を象徴するような現象がいろいろな形で出ています。

88年から93年までは変化の第一期です。平和という言葉のイメージからは、安らぎ、優しさ、女らしさ、楽しさ、若さ、明るさといったものが感じられますね。ここからはミニスカート、花柄、カラフルといったファッションが出てきました。

地球の平和をグローバルに考えると、動物にもやすらぎという考えから、エコロジー、環境保全、リサイクルという考え方が生まれてきました。

安定、保守、歴史、伝統という風潮を肌で感じて、紺ブレが流行るというように時代がファッションに現れてくるんですね。

 

「世紀末の新しいファッション感覚」

 

第二期にあたるこれからの五年間は、いよいよ変化の本番です。

これからどうなっていくのか?

それは根本的な変化です。今までのファッションにあった良い素材、よい仕立てといったものへの              評価は変わりませんが、それに加えて今までと大幅に違う価値観がプラスされ広がて行く、という現象が出てきました。

98年まで続くこれからの5年間は、世紀末の時代ですよね。これからが変わるんですよ。どんどん新しく、変わったものが出てきます。

いま、一番とんがっているファッションは、リサイクルファッションとでも言いましょうか、私が着たら完璧にフォームレスに見えてしまうような、世紀末、アバンギャルドなものです。(笑)

シルエット、素材、色、縫製なんて関係ない、今までの価値観と違うものがってくると思います。

既存価値にこれからの価値が加わって混然とする状態になります。

 

「多様化を楽しむ」

 

今日のファッションでは、生活実感を大事にする傾向が大きくなってきています。高いハイヒールを履いていたのが、フラットシューズをはくと、もう爽やかで実用的で、三日もはいたらハイヒールに履きなおすのが面倒になってしまいますね、(笑)

実用的、活動的なカジュアルな部分はどんどん広がりますが、豊かな時間の使い方という点で、歩くのも不便な高いハイヒールわざわざ履いて楽しんでみるという方向もあります。

価値観の多様化は、洋服の多様化を生み出してくるんです。

では何を着るか?

何でもいいのですが、魅力的でチャーミングな在り方と、ダサイ、どうもいま一つという在り方と、二種類に分かれますね。

 

「着こなしは、着崩し」

 

今風な着こなしは、着崩しです。

例えばコレクションでは、シャネルスーツにスノーブーツにスニーカーを合わせて見せていました。

グランジー(汚い)という用語が盛んに使われています。

ドレスアップに対して、ドレスダウンがカッコいい。

一度壊して、自分らしく組み立てていくが大切なのですね。着こなしの大事さが、洋服の価値を作るのです。

ブランドやデザイナーの名前で着ていたものも、それはそれなりに綺麗ですが、これからは自分なりの着こなしに価値がある。

どうやって自分を生かしていくかが大事です。

それにはたくさん見ること、他人の着こなしを見るということが、とても役に立ちますね。

モデルの着こなしを100%自分に取り入れることは難しいですが、この会場に集まった方方は参考にしあえます(笑)あの人が魅力的に見えるのはどうしてだろうと考える。

集まりに出ると、刺激を受け自分の着こなしの役に立ちます。

 

「時代のイメージは普通の女の子」

 

93年はモデルのイメージが変わりました。

これまでは背が高く、胸が大きく、ウエストは細いという完璧な女という美を備えたスーパーモデルが称賛されました。世界中から美しいという人が集められ、年間二億円というスーパーモデルが活躍しました。

東京コレクションに出たあるモデルは、一日のギャラが六百万円、美しいといってもいいですね、(笑)

ところが今年のコレクションのトップは、ケイト・モスというイギリス人モデルです、背は169センチ、胸の大きくなく、頼りない、そのあたりにいそうな普通の女の子です。

衣装とメイキャップがないと、さりげなく、小柄で細りとした普通の女性で、美女ではありません。気取らず、カジュアルで日常のイメージです。

背が低かったり、足が太かったりというのは、欠点ではなく個性です。

痩せていればいいわけではないのですね、個性は作り方次第でよく見えるのです。

今日自分をどう作るのか、明日はどう自分を作るのか、これが皆様のオシャレのやり方ではないでしょうか。

ルールが無くなって、選び放題です。

これを上手に生かさなかったらもったいないですね。

 

大内順子

編集長・談

本当に惜しい人を亡くした。

女性たちのファッションのバイブルだったような気がする。

優しくて何事にたいしても真面目に話を聞いていただいた。

ヨーロッパのファッション事情など分からないことを訊ねても快く教えていただいた、感謝ばかりだ。

有難うございました。