NAGASAWA Magazine|ながさわマガジン

千葉 千枝子の旅行学

 

人生を有意義に過ごしている人は美しい、千葉千枝子さんはまさにそれを実践している。

観光ジャーナリストとして大きな視点で世界を見て、学び、遊び、まさに旅が、

最愛のパートナーだ。

 

そして旅の醍醐味を多くの本で見事に表現されている、素晴らしい。

NAGASAWAMAGAZINEでは千葉さんに変化を感じる昨今の”旅”について聞いてみた。

 

黒のシルク地のジャケットを何気なく羽織った千葉さんは明るい笑顔で待ち合わせ場所に現れた。席に着くなり「このホテル、大好き」

緑に囲まれているロビー・ラウンジはゆったりとした席がバランスよく配置されている。

 

確かに雰囲気があり気持ちも安らぐ。

世界のあちらこちらを歩いてきている千葉さんがゆったり出来る時間は少ない。

行動的で何事に対しても動じない強さをもっているように見えるが、本当は優しい細やか心をもったレディだ。

 

千葉さんは観光、旅をジャーナリスティク(journalistic)に捉えている。

中でも現在最も大切にしているライフワークの一つに、“ロングステイ・スタイルの旅”がある。そこに焦点をあて聞いてみる。

 

「私は何年も前から“旅”という形が変わってくると考えていました、それは、アジアを多く旅して思ったことですがいつも日本は見られている模範の国といわれてきたことも一因します」

千葉さんの熱が入った言葉が続く、

「アジアの人たちの多くは子弟を出来れば外国にいかせて勉強させたいと強く思っています」

「行き先の一つは日本です。世界を旅していると日本人のマナーの良さは抜群と知らされます。勿論マナーの悪い人たちもいますがしかし日本人の真面目さ勤労勤勉の精神は確かに群を抜いています」

アジアの人たちが日本に来て感じるのはまず街が綺麗なこと、緑豊かな分離帯が続く街路など人だけでなくすべてが整然としているさまに驚きを覚えるという。

 

アジアの一部ではまだこうしたインフラ整備や景観保護はなされていないし、確かに日本の人たちは静かに行列をなす。そこに美しさを見出しているのである。

「これからはアジア域内を旅する人たちそして訪日客がますます増えます。私はそうした人たちにもロングステイに通ずる“体験”と“交流”の旅を提案していきたいと思っています」

近年長らく勤めあげた日本の人たちによるアジア滞在情報が頻繁にテレビで放送された。千葉さんは言う。

 

「アジアの国々に長く滞在してその国を知ることは大切だし喜ばしいことです。しかし私が提案しているロングステイのコンセプトは・・・訪問先での人的ネットワークやコミュニケーションによる“国際人”としての磨き自己成長なのです」

ゴルフをしたりただ、のんびりするばかりでなくアジアの国々の人たちの懐に、深く入って多様な人たちの心の声を知ることだ、と千葉さんは話す。

「具体的にいうと例えば現地で日本語を教えたり料理を教えあったり、その国の人たちとの繋がりになる材料を見出しながら良好な関係を築き上げていく、そうした信頼が大切だ」と強調する

 

「かつて台湾でのロングステイを望まれた高齢のご夫婦が実際現地へ行ってみるとそれが,なかなか上手くいきませんでした。現地の人たちには大歓迎で迎えていただいたのですが・・・」

息を深くついてチョット悲しげな表情で、「我々のなかには特に高齢者の方に多いのですがアジアを軽視する傾向が多少はまだ、残っているようですね」

その内容についてあまり話したくない様子たったがしかし、千葉さんはグローバルな視点に話を変えて「日本の方たちはもっとアジアに目を注ぐべきですね。同じアジア圏に暮らす人たちを心から理解して敬意をはらう―――。そうした点では団塊世代の方々や若い世代の方たちは心得ていて好意的に接していますし、これからが期待されます」と続けた。

 

 


 

そしてご自分の話に繋いだ。

「私の父はもう80近い高齢者ですが会社を辞めてからしばらく台湾のある企業に指導の立場で行っていたのですね。始めは大変だったようです。言葉だけではなく習慣だとか、気候もそうですが、しかしあちらの方たちの優しさに触れるたびに父は台湾を好きになっていったのです」

話に熱を帯びてくる。

 

「台湾の人たちはさまざまな想いを凌駕して日本という国、民族に敬意をはらってくれますし親しさをダイレクトに伝えてきますね。それを父はすごく嬉しく感じたそうです」

お父様の台湾での滞在も長くなり今までになく台湾を好きになっていったと、話してくれた。アジアへの偏見は「高齢者だから」と一概にはいえない。往き来を繰り返す、長らく逗留することも大きな意識改革になる。

 

千葉さんの数々のロングステイ提案の根底にはこうしたお父様の台湾での経験や価値観の変化が大きな役割を担ったことは確かだろう。

その後の話の中で千葉さんが感激したエピソードを話してくれた。

「母が亡くなったときのことです。父は連れ合いが逝去したことを台湾の職場の人たちには話していなかったのになんと職場の皆さんからお香典が送られてきました。なかには焼香のために来日してくれた人もいて本当にビックリしました」

 

千葉さんは感激しながら続けた「異国の人たち特に台湾からの心のこもった行為は東日本大震災のときも決定的でしたよね。人によってはなけなしの貴重なお金だったはず」と千葉さんは目を潤しながら話す。

駐在や業務渡航は別としても我々日本人もアジアの国々、台湾をはじめタイやマレーシア、インドネシア、ベトナム、ラオスといった成長著しいアジアの国々へもっと行って欲しいと力説する。

「仕事人や子育てを卒業して残りの人生を謳歌している団塊世代の方たちは勿論、若い人たちも夏休みのような長い休みを利用するなりしてアジアの人たちとの交流をもっと持って欲しいと願っています」 

「お互いのカルチャーを語り感じて、学ぶ心を持つべきだ」と千葉さんの人間としての熱い魂が感じられる。

「短い観光の旅ではなく長いステイをベースにした旅の提案を私はこれからも続けていいと思っております」

ロングステイ旅の素晴らしさをエネルギッシュに語る千葉さんの目は輝いている。

 

 

 

いま千葉さんは多くの仕事を抱えながら大学で学生たちに観光学を教えている。

若い人たちに旅の素晴らしさ、旅から学ぶことの大切さを知って欲しい。

「自分満足の旅も大切ですが相手の国の人たちの心(ハート)を掴むことも忘れないで欲しいですね。そこで初めて自分らしい旅の在り方“新たな物語”を紡いで下さい。

旅を演出する楽しさもまた格別。

ご自身の人生の一頁にぜひ滞在型の旅を加えていただきたいです」

 

まだ千葉さんの「旅行学」は次回に続く。

 

企画・取材・    永澤 洋児

フォトグラファー  五頭 輝樹