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ルイ・ヴィトントランクの今  前田 勝介

ヴィンテージ・ルイ・ヴィトントランクの深さ

前田勝介・編集小冊子“100年前の旅したモノグラム達”を参照として、ルイ・ヴィトンの素晴らしさを連載して5回目を迎える。

3月号では“旅とトランク”というテーマで、ルイ・ヴィトン・トランクの「船の旅」での活躍に触れたが、今回は“ルイ・ヴィトン・トランクと今”にスポットを当ててみたい。

ルイ・ヴィトン・トランクが最高に盛り上がりを見せたのは、やはり船の旅に尽きる。1800年後半から1900年半ばまでの“旅”の主流は「船」だからだ。豪華客船が世界の海を往来することが、“船の旅”エンターテイメントの始まりになった。

豪華客船は、デッキの高さ、キャビン(部屋)の広さで階層が決まる。

飛行機でいうファーストクラスのキャビンは高層階に位置している。

ビジネスクラス、エコノミークラスになるとキャビンの階層が低くなり、キャビンも狭くなる。

 

旅を楽しむには、旅に必要なライフスタイルを熟知し表現するとことにある。昔の船旅は目的地に着くまでの時間が長い。そのため、日常の生活に必要なもの、そのすべてを船に積み込んで自分のスタイルを維持することが富裕層の証となる。

それを表現できる要素のひとつが「ルイ・ヴィトン・トランク」だ。

ルイ・ヴィトン・トランクを何個積むことでファーストクラスなのか、他のクラスなのか、見事に振り分けられる。

それが当時の船旅の法則なのだ。

世界でルイ・ヴィトンの必要性が叫ばれていくと同時に旅でのヴィトン・トランクの活躍が喝さいを浴び、その話題が世界を駆け巡るさまはルイ・ヴィトンというネームの凄さの表れとして多くの人たちの心を揺さぶることになる。

しかし、その後、船の旅から飛行機の旅と、旅のプロセスは変わっていく。

船での旅で大活躍を見せたルイ・ヴィトン・トランクは、その後1900年後半の旅から消えていった。(想像だが)

 

“100年前の旅したモノグラム達”に記されている、「船」「自動車」「鉄道」の最終章に「空の旅」として書かれている一文がある、紹介しよう。

 

「空の時代とルイ・ヴィトン」

文面中ほどに「大型飛行船ツェッペリン、ヒンデンブルグ等が活躍し、定期航路・郵便事業(星の王子様、サン・テグジュペリの夜間飛行)も始まり、お供と大荷物の船旅から“自分で荷物を持っていく”空の旅へと至りました、よって必然的にヴィトンの製品にも一層の変化が求められたようです」とある。

 

確かに「空の旅」になると横長のスーツケースやトランクは似合わなくなる。

空が舞台の飛行機には、旅アイテムが別のスーツケースに代わることが強いられる、時代の流れだ。

その時代の流れを、前田小冊子は「旅という、時代の最先端の仕事を担ったヴィトンとエルメス」という一章がある。

フランス文化を背負う、ルイ・ヴィトンとエルメス、当然、当時から現在まで、ルイ・ヴィトンが意識するのは“エルメス”以外考えられない。

“エルメス”の磨き抜かれた伝統の美学は富裕層向けに作られた超高級カバン旅行用カバンなど、その後は大きなブランドとして世界を揺るがしていく。

 

「ルイ・ヴィトンも少し遅れて、小さなハンドバックから煌びやかな付属品のコスメトランクなども販売していたが、やはり、機能第一の旅行カバンが主流」というコンセプトが邪魔をして、開発に時間を要したことは否めない。

下記の画像は、ルイ・ヴィトンの新しいスーツケースの一部だ。

原型は、勿論、ヴィンティージ、ヴィトントランクと変化はない。

(写真はウエブ”ルイ・ヴィトン”から)

成長・拡大が明らかな航空産業、旅する富裕層たちに向けての、新デザイン、近代的なハード・トランクが注目を集めていたことを知りながら、ルイ・ヴィトンが理想の素材を手に出来たのは、エルメスなどの他社より遅れての発売となる、これが、現在のヴィトン主流ブランドの“旅行バック”に繋がる。

日常生活にマッチした“旅行カバン”スポーティヴ・シリーズを次々と発表。

多くの有名、著名人やスターの御用達ルイ・ヴィトン・ブランドとして人気を深めていく。

 

しかし、現在の旅の主流はスーツケースは「リモワ」Rimowaなど、アルミニウム、ポリカーボネートで代表される丈夫で軽いスーツケースカバンが主役だ。

 

ルイ・ヴィトンも「バック屋」でなく「トランク屋」としてスタートしたことから“旅行”トランク・カバンの最先端を歩くことに、多くなプライドを持っている。

 

現在は、オシャレで様々な工夫を凝らした“THE SPIRT OF TRAVEL”というシリーズもので世界から注目を浴びている。

 

このシリーズでのコピーを注目したい。

「革新的な素材で空の旅へ、心地よい海の旅へ、驚きに満ちた遥か彼方の旅へ、」そして、「革新的でラグジュアリーなルイ・ヴィトンの新作ラゲージ“ホライゾン・コレクション」‥‥驚くほどの収納スペースと軽さを誇る…快適で洗練された旅を実現します」とある。

まるで、1800年、当時の、ルイ・ヴィトンが謳うコピーそのものだ。

時代が変わっても、ルイ・ヴィトンのコンセプトは同じだ。

船、鉄道、車、そして、飛行機、と旅行の形が変わっても、創始者・ルイ・ヴィトンが謳った「トランクとは旅行道具―旅行とは交通―交通とは文明」は、今も、ルイ・ヴィトンの精神だ。

 

「100年前の旅したモノグラム達」小冊子に書かれている「革新」の二文字は、まさに、全てが「ルイ・ヴィトン」の進歩の核心を言い当てている。

四角く強靭、軽く、防水、積み重ねられる箱、ヴィンテージ・トランクは、形こそ変わるが、現在のルイ・ヴィトン・トランクに脈々と受け継がれている。

 

企画・取材・写真・nagasawamagazine・編集部

協力      ・”100年前の旅したモノグラム達” 前田 勝介