エンタテイメント
群馬カルチャー・フォーラム
山田智彦
「群馬トヨタ・カルチャーフォーマルを振り返る」
平成元年(1989年)10月からスタートした群馬上毛新聞社企画・群馬トヨタ・カルチャーフォーラムは、平成8年11月にかけて開催された。
講師として参加いただいた奥の文化人の方々は、それぞれ、お忙しい人たちばかりだった。
僕の頼みを聞いてくれ、快く参加してくれた、ありがたいと思っている。
こうした文化フォーラムは、日本では非常に難しい企画ものだ。
それも地方の新聞社がその土地の生え抜きな地方企業と組んでの文化イベントは、多分、日日本では始めてのことだろう。
群馬トヨタ、上毛新聞社は地方の企業の一つであり、メジャートヨタ企業とのつながりはない。あくまで地方で生まれた企業の一つである。
また、上毛新聞社も地方に生まれた新聞社の一つ、しかし、地方新聞社の中でも
大きな存在としての他の新聞社を圧している。その活動は素晴らしい。
経済的にも、裕福ではないが地方の新聞社が生きるためには、最高の行動力を持っている。
僕は、上毛新聞社のイベント企画に参加して、20年近くなる。
社長はじめ、社員たちの意気込みのすごさは、他の新聞社とは違って写真全員の心構えがこのフォーラムを盛り上げていた。
参加をしていただいた講師の人たち、個性の強い人たちばかりだった。30年近い月日が経つ現在も全員心に残る人たちだった。
なかでも、現在は存在されていない人たちも多い、その人たちを含め、僕が手掛けたイベントの中でも、心に残る。
素晴らしいフォーラムだったと、誇らしい気持ちだ。
第一回のゲストは、女性タレント「南 美紀子」さんだった。
現在も時々お会いすると、当時のことを話す、思いで深いファーラムだったと。
「nagasawamagazine」の中でも、何人かの当時の方たちを振り返る特集を組んではいるが、まだまだ、全員とはいかない。しかし、今後はなるべく多くの講師の方たちの「講演」を振り返っていきたいと思う。
30年過ぎた2020年4月号で取り上げる講師の方は、小説家で冒険家、未知の世界を探ることが大好きな作家「山田智彦」さんだ。
山田先生とは、特に仲が良く、このイベントを企画したときに、いち早く参加をお願いした。
快く僕の願いを聞いてくれ、楽しい講演会となった。
その模様を「4月号」でご紹介する。ぜひ、読んでいただきたい。
平成元年12月09日・会場・群馬トヨタ前橋営業所TOYOTA・PAL
講師・作家・TVキャスター・山田智彦
タイトル「青春の領域・夢とロマンと冒険と」
“小説家をやめるように説得される”
私は早稲田大学の学生時代に、小説家を目指していました・しかし、小説家の夢は結局実現しないで、大学を卒業を卒業する時期が来てしまいました。これは就職するしかないなと思って、銀行に入ることにしました。就職が決まって指示していた作家の小島信夫先生に報告をに行きました。私は内心「君は文学的な才能があるから、会社の仕事は程々ににして、早く小説家になりなさい」と言われるのを期待していたんですね。
ところが小島先生は「それはいいところに入社した。これを機に小説をやめて、銀行の仕事に全力を挙げてやりなさい、他の人の二倍くらい仕事ができるようになるまで、小説なんて書かないほうがいい」といわれたんです。がっかりして、それから一時小説を書くのをやめてしまったほどです。
“30歳を目前に迷いが吹っ切れて”デビューする。
しかし、夜家に帰ってくると、小説を書きたいという夢が読みかえってくる。でも、小島先生の言葉や、文学上の行き詰まりもあって書けないわけです。結局六年間一遍も書きませんでした。でも、本だけは読んでいました。文壇に新人が登場するのを横目で眺めながら本を読む。目標は三十歳にあんる前にデビューしよう、ということですでした。目標の三十歳を目前にした二十九歳の時、それまで解決できなかった文学上の悩みが解け、一気に作品を書きました。その「犬の生活」という作品が文学界新人賞の佳作に入選したんです。この当選をきっかけに小説を発表するきかいができて受章後第一作の「予言者」の候補になりました。
“ビジネスマンとして自分を高める努力を続ける“
ある経営者が二世経営者を育てる時に、息子を別の会社に勤めさせたそうだです。
ご存じのように、二代目、三代目はうまくいかないことが多い。父親は見識のある人で、息子に始業の一時間前に出勤させ、英字新聞と日本語の新聞の二誌を読むことを命じました。
父親の会社にもどってから、いい経営者として業績を伸ばしているそうです。
“書斎を持たない経営者は失格”
また、大変業績のいいある会社の社長が御殿のような家を建てました。日本でも何番目というような豪邸だそうです。尋ねたある人が、豪華さに目を見張りながら「しかし、あの家には書斎がない」といったそうです。その会社は一時はよかったのですが。結局倒産してしまいました。書斎を持たないような経営者は長続きしません、仕事をきちんとやっていく為には、勉強しなくてはいけません。よほどの豪邸を作っても、勉強の場がないというのは失格です。成功経営者、ビジネスマンは、必ずといていいほど自分を高める努力をしてます。
“五つの分野の本を読め”
では、どんなな分野の本を読んだらいいのか。
私は、次のようなジャンルの本を読んだら、と勧めます。大きく分けて五つの分野があります!
1 大脳生理学
ハーバードビジネススクールの第一の必須科目が、大脳生理学だそうです。まず、
書店の棚の中で、わかりやすいのを二冊ぐらい選びます。頭を鍛えるのに、まず、頭脳自体をを知る必要があるわけです。
2 経済学の基礎
マルクス経済学とか近代経済学ではなく。日常の経済の動きにつながるような経済学。
3 文学
小説家だから言っているのではありません。社会で仕事をするうえで、文学は必要なのです。いわば人間そのものを学ぶために文学ほど適したものはありません、たとえば、シュークスピアには人間のあらゆる行動様式、感情や心理が出ています。主役は勿論。端役の語っているセリフにも深い人生の知恵が込められています。
4 歴史
まず、関心ある時代から読みます。戦国時代に興味があればそこから始める。すると、その前後が知りたくなります。歴史には学ぶべきことが限りなく含まれています。
5 哲学
哲学というとあれ?と感じる人がいると思いますが、カントや、ショウベンハウエルといった無味乾燥な本ではありません。哲学の基本問題が素朴な形ででているには、ソクラテス。プラトン、アリストテレスです。基本的な哲学の問題はここに出尽くしています。まあ、ニーチェは近代では例外的に面白い哲学者ですが。勿論、このほか自分の専門、例えば私なら国際金融とか、為替とかの専門の勉強は当然するわけです
“志を持って努力すればかなわない夢はない“
小説家の井上靖さんと国交回復の前に、中国に作家代表団で行ったことがあります。
ご承知のように井上さんは、若い時からシルクロードにあこがれ、何篇も小説を書いている。しかし、現地にはいくことができず、「敦煌」などは、資料を調べて想像で書いたのです。
その長年の願いが叶って、現地を見ることができたわけです。
歓迎パーティの夜、ホテルの部屋で話した時のことです、井上さんは強いマオタイ酒で、顔を赤らめておしゃいました。
「私は長い間シルクロードにあこがれてきた、はるかに遠い場所で、若いころは一生いけないと思っていた。しかし、思い続けて努力していれば、必ず実現するんだね」。
自分の夢を忘れずに、思い続けて努力を続ける。この言葉に私は感動しました。それ以来落ち込んだりしても、あの中国のホテルで、念願かなってシルクロードの地に至った井上さんの何とも言えない表情。また「思い続けて努力をする」という言葉を思い出すと、胸の内に力がわいてくるのです。拍手の中講演は終了。
講演が終わり、山田智彦さんは会場の皆さんが熱心に聞いてくれたことに、うれしさをどう表現していいのか、その姿は、山田さんの心の清らかさを表していた。
編集長談
僕は山田先生とは、割と長い間お付き合いをさせていただいた。
「週刊現代」で現在の“アマゾン“を情熱的に書いていらしたとき、何度がお会いして、情熱溢れる、取材などを、丁寧にお話していただいた。優しく力強く、何を聞いても、優しく答えていただき、心から尊敬と信頼は変わらなかった。
虎ノ門に、山田さんが勤めていらした銀行がある、銀行マンらしい雰囲気は変わらず、落ち着いた優しい雰囲気は心が和む、お亡くなりになったことを聞いたとき、もっと、先生のそばで先生が歩まれた世界の中に、飛び込んでいけたらよかったと、悔やんだ。
多分先生はもっと多くの文学作品に向かって歩んでいきたかったのだと思う。